パワーエロスシリーズ

快楽神 神縛変――不老不死憧憬

かいらくしん しんばくへん――ふろうふしどうけい

ひんみり 作
Copyright (C) 2010 Hinmiri. All Rights Reserved.



広大な軍実験場―― かつての核実験場跡地に、出現した美貌の人影は――
快楽の女神。
人とは段違いのパワーを誇る、魔神――淫魔神、邪神――
少女の姿をしていた。
パワーにたぎっている。
淫乱極まりないコスチュームは、露出過剰で――悩ましい半裸の姿。

呼び出されたのだ。人に召喚されて――

「あーら つまんない生き物たち! 呼び出してくれちゃって――わたくしに何のご用? なーにが高等知的生物よ! くだらない戦争や、つまんない争いごとばかりに、うつつを抜かしちゃって、腹立つわね!! ほんと愚かだわ! あんまりタワケた行いばっかり地上でやってると、わたくしが清めちゃうわよ! そう、天地絶滅。メチャクチャに滅ぼしちゃうわ! 神がその気になったら――愛らしい神が神罰を与えるわよっ!!」

「あら? 聖者聖人のたぐいなんか、たくさん差し向けちゃって……なーに わたしをとっ捕まえる気? ふーん おもしろそうね 付き合ってあげる――


上からの物言い。神ならではの傲慢さだ。当然とはいえ、超激烈に思い上がっている。
ヒトと神とでは、アリと恐竜ほどの力の差があるとはいえ、凄まじい高慢さで美貌は笑っていた――


見た目は美少女である。だが実力は、持てるパワーは凄まじい。
ヒトの持つパワーをマッチ程度とするなら、神の持つパワーは水爆級だった。

できる証拠に―― 神は周りに、快楽の火球を生じさせた。
苛烈な修行を積んだ高僧たちが、飲み込まれた。対抗するすべも無く――
対神用包囲、迎撃の魔法円、秘呪術の粋を凝らした模様の一角が、光に覆われ、対淫邪の聖人集団は、大地に刻まれた魔法陣が、一瞬に焼け溶けた。

神光を浴びたとたん、高僧の肉体はみるみるうちに削げ落ち、痩せ細り、噴火するかのごとく、烈火のごとく射精し、精液を出し過ぎて、先頭の僧から、死亡した。

死にゆく高僧の視覚に見えたもの。少女神の裸体は、何千何万という数に増殖していた。
悩ましい分身である。
術を受ける者にとって、全て実体。
数万とも知れぬ女神の肢体の洪水、美肉の壁が襲いかかる。豊満な乳が、たくましい尻肉が、怒涛の肉津波と化し、押し合い競り合う女肉の壁となって、僧の眼前を覆った。
ねっとりと、ねぶりの巨大な肉壁は、肉の巨波となって男僧らを呑み込む。
美肉に埋まってゆく。僧たちの肉体感覚は瞬く間に、どろどろになる。
熱い肢体に、擦られ洗われ揉まれ、とどめとばかりに巨大な膣腔が、人食いサメの口みたくガバッと開き、高僧の全身を飲み込んだ。
聖なる意志など一瞬で溶けた。
凄まじい体感は! 悟りの境地だ――溶解してゆく肉体から、死にながら全体腔が、全身の毛穴から精液を噴射した。
壮麗な嵐の渦中に、麗しき肉山に、全ての精を放った。
全体液が精液になる。わずか数十秒で。
ヒトとして味わえる最高度の快楽に溺れて、射精死したのである――

人知を超えた法悦に満ち満ちて――
過酷な修業によって創り上げられた、聖性による防御など無意味だった。

脳髄の性本能を直に握り搾り取られてゆくような、神のねぶりが数段膨れ上がった後、静まった。
淫らな光が一点に鎮まる。

あとに残るのは、乾物化した死体と、一人の全裸の美少女だけ――


 * * * * * *


実験場から10キロ離れた管理棟で、女性オペレーターたちが報告する。
「体液の三分の一から40%が快楽物質と化しています。」
「快楽死しています。死因は強すぎる超快楽物質によるショック死――」
女博士が感想を洩らす。
「すごい死体ね。強力な麻薬が詰まった肉袋といったところかしら? フツーの麻薬が効かなくなったジャンキーでさえも一瞬でショック死するほどの強さ、想像を絶するほどのキツさだわ。」

 * * *

ちゅうちゅう……
モニター画面上では、少女神はなおも僧らの死体を嬲っていた。
獣のように四つん這いになって、悩ましい唇が、男根を吸う。搾精の超技巧が猛威を見せる。
死んでいるのに、僧の体からは精液が出た。人知を超越した嬲りの凄まじさに、僧らの体はさらに縮んでゆく。

猛然と吸引すると、精汁が一気に吸い取られ、体がペコペコに凹み、薄くなった。
骨と皮を残し、ペラペラに平べったくなった亡骸を、ポトッと落とす。野獣の性欲だ。


監視カメラのモニターを見ていた、軍施設トップの将軍が言う。
「あやつら、まったく役に立たんではないか。さっぱり侵攻を止められんではないか。このままではここまで侵略されてしまうぞ!」
「相手は神です。対人、対魔用の聖者では元より不足ですわ。」
「ご安心ください。彼らは、いわば撒き餌ですわ。鎮神、殺神用の、秘密兵器作動はこれからです。」


神少女の周囲で、装置が作動した。
突然、砂地より金属棘が現れ、とび跳ねた。
巨大な棘が次々発条する。跳ね上がる!
神が――人の仕掛けたトラップにかかった――
地より巨大な蟻地獄の巣のようなものが現した。先端は尖る。超古代の封神装置。
金属の網が二重三重に女邪神を覆ってゆく。
メタルののようになる――
棘には食虫植物の粘液のような、ねばい魔液が塗られ、食虫花に掛かった虫のように、クモの糸の粘液のように、神体を絡みとって離さない……

さらに、トドメとばかりに、対魔の針がブスリ!と、少女神の背に刺さった。
痙攣する。昆虫採集に似たポーズで、まるで磔刑だ。

神は移送された――



地下秘密施設――
壁に大音を反響させ、割れんばかりの大声で喘ぐ絶叫は――さっきまで暴れ狂っていた暴虐の少女神。
捕らえられた女神が、神液をぶち漏らし、悶え狂っていた。
極太いチューブが数本、股間に結合、いや、穴という穴に、むごく突き刺さっている。
蛇のようにうねくる、ごついパイプ群は、超特大サイズの、まるでバイブだ。
そのデバイスは、悪魔のような禍禍しい突起を生やした、生体ケーブル。汁気を帯びた――
薬品の匂いがする。
秘薬であろう。
神に対する拷問。
人がバイオテクノロジーの粋を凝らして造りだした、対魔神用の、魔性の捕獲器である。
封神の銛は、超攻撃的なデザインを、人に使えば即死する形状の、瘤状隆起が、淫らな棘皮が、凄まじ過ぎて、常人なら吐き気を催すだろう。
それらが全部、神の肉腔に詰まり、押し込まれている。
暗黒の呪文が毒々しく刻まれた肉縄が、幾重にも神体を縛る。
神が縛されている。
激烈なる緊縛である。
太古に失われた秘法――大淫の秘法、神縛術――
あらゆる神秘術を、惜しげもなく注ぎ込まれ、練り上げられた、殺神装置であった。

魔技に意識を消失させ、神肉は忘我している。
神格を失って、生ける死体に近い。
人が追い込んだのだ。ここまで――

淫神の粘液は、端子の先から、多量に噴き出していた。
ぶびぶび……
どぷどぷ…

「大量に溢れてますわね。神の愛液、分泌液、神秘の作用に満ち満ちた液が―― 歴史上の王侯貴族、世界中の大富豪たちが求めたものです。不死を可能にする――奇跡を起こす秘薬ですわ。」

「神液を集めて何に使うのです? よからぬことに? 寿命をお伸ばしに? それとも新たな神秘兵器でも造られるのでしょうか?」


「権力者が、不老不死を、永遠の健康と若さを求めるのは、自然なことだ。いや、それは必然だ。
最高の地位を得た者が、あらゆる欲望を充足させた者が、最後に願うことは、昔から相場が決まっておる。おお!この生を手放すものか!
究極の欲望は、人類とは自然の摂理に逆らう者、運命に抗う者、それが進歩じゃ、人とはそういう生き物ではないのか?」


「おっしゃる通りですわ。愚問でしたわ――
東洋に伝わる八百比丘尼の伝説をご存知でしょうか。人魚の、海の妖怪の類の肉でも、食えば不老不死になれるそうですから、神肉なら、なおのこと――美味しいでしょうね。さぞかし。――でも、食べられるでしょうか? 神肉は強すぎて、人の胃では焼けるんじゃなくって?」


女博士の指がコンソールに触れた。ボタンを押す。起動する。弁が開き、ポンプが作動する。
どく!どく!とチューブから、大量の溶液が送られて来る。それは“神殺”の猛毒。
接続された神少女の尻に、性器に、口に、ぶち撒けられた。

どくん!どくん!

さらに負荷がかけられた。二万ボルトの電圧。
煙が上がった。
無慈悲に上がってゆく。破壊のボルテージは、地震のような揺れと衝撃と振動。
失神状態の少女神の瞳が輝く。裸体は虹色の炎を上げて、奇怪な松明(たいまつ)のように、燃えはじめた。
極彩色の電光が、アーク光がきらめき、眼球がカッ!と見開き、無数に雷撃が縦横無尽に突っ走ったかとおもうと、全身がひび割れ、神体は爆発した。

殺神の劇薬に、神肉が弾けた。バラバラになった。

「なぜ破壊した!! 貴重な験体だったのだぞ!! これほどの上物は二度と手に入れられん!! 半殺しの神など――」
「嬲りものにされた神など、神では無い? 半死半生の管理された神体を、人が神を憐れんだとでもいうのか?」

「いいえ。違いますわ。」

「いいように人に使われる化学製造プラントにしようなんて、秘薬の生産装置? 儲け損ねましたか?」


湯気を上げる神肉の向こうで、凄絶に微笑む女博士。不気味な笑み。
女プロジェクトリーダーの―― 声が変わっていった。

声は少女神に――
女神の顔に変じていた。

「協力してくれてありがと☆ お礼にイイ褒美をあげるわ!!」

爆散した神肉を、懐かしそうに摘まみながら、歩むたびに、プロポーションが凄まじくなる。次の瞬間、白衣が吹き飛んだ。爆散した。

全裸と化した女博士の肉体は“完全に”神化したのだ。
「ひ、ひい! 憑いていたのか? 転生したのか?」
「初めから憑いていましたわ。元よりこの女の知力と知識では、限界がありましたから。わたくしがいくつかヒントを与えて、プロジェクトを貫徹させたのです。」
裸体を隆起させながら女神は言った。
「自らを処刑する死神になったのですわ!」
得意気に宣言する。
「自らを追い込んだなどと??」

「一度死んでみたかったんですよね。」
裸女は深遠に微笑む。
「神体がイクときの快楽を、あなたがたにも教えてあげます。愉しいときを過ごしましょう――」

軍秘密研究機関を巻き込んだ快楽神の自慰行為――
17秒で爆発した。
研究所全体が火薬になったかのように炸裂し、巨大な肉塊火球が、半径20キロメートルにまで、急激に膨らみ、光球は膨縮し、何度も地上を磨り潰し、研究施設は分子レベルまで分解され、跡形もなく完全消滅した――


 * * * * * *


夜明けの砂地に僧らが目を醒ました。
一度は死んだ僧らである。
肉体は美しく復活していた――

わたしは邪神じゃないのよ。慈悲深いのよ。勘違いしないでよね! 後生大事に生きなさい。

天の声が聞こえた。預言のごとく降ってきた。
オペレーターの女性らが身を起こした――
スタッフは全員いた。
二名がいなかった。
将軍と女博士―― 二人の行方は、誰も知らない。




end



10/3/19 UP

あとがき

text index

top