バカエロもの

エロ要員 純愛憧憬――(1)序

えろよういん じゅんあいどうけい――(1)じょ

ひんぐるみりは 作
Copyright (C) 2006 Hingurumiriha. All Rights Reserved.



「まさか? ひょっとしてまさか? わたしって、エロ要員?」
それを疑わせる要素が、その女自身に幾つもあった。


まず姿が全裸だ。パンティすら穿いて無い。
それに凄いエロボディだ。 大柄な肉体に、成人女性の、メリハリが効きすぎなくらいの、乳と尻が盛りあがっている。すばらしい乳と尻のラインだ。官能のエロラインだ。でかくていやらしい、淫らな肉の実りだ。乳首は乳輪ごと勃起し、でっかい尻もいやらしく紅潮し、おっぱいは乳張る(チチハル)だ。陰核は隆々勃ち誇り、性器からたっぷりと汁も垂れている。脚も腕もぷりぷりとした肉だ。柔肌はうまそうだ。充実している。ずば抜けたグラマーだ。究極レベルにあるエログラマラスだ。

顔は美人である。というより、そそる顔。清楚さえもエロのための要素のようだ。顔面から媚とエロスがしたたっている。ベールのように媚が覆っている。
ノーメイクなのにルージュを塗ったかのように紅い唇。舌と歯で口淫奉仕を約束するような口だ。誘っているかのようだ。淫肉の証だ。顔だけでも十分に抜ける、実にいやらしい造形だ。輝く美貌も、図抜けたセクシーさだ。
美と媚が全身にフルパワーで炸裂している。


しかも状況が完全に狂っていた。女が置かれた場面は常識の外だった。全裸の淫獣どもに囲まれている。美貌とマッチョな体に超美巨根をぶら下げた人外どもだ。どいつもこいつも巨体のエロ丈夫だ。エロス極まる世界で、高純度のエロが、ガソリンのように粘く匂っていた。


そして最後の要素が決定的だった。
あの女神がいたのだ。淫界の主神である。
ここがまともな世界では無いことを、普通では無いことを、妖異な存在そのものが教えていた。


女神が美しい金鈴(きんれい)のような声をかけてくる。


「あら? 自分が恋愛映画か少女マンガのヒロインだとでも思っていたの? この状況下で?
おもしろい子。んな訳ないじゃな〜い。あはは。
あなたは超伝奇バイオレンスのヒロインよ。ようするに平たく言うと、エロ要員ね。」


「いやああああ!!!! 絶対にいやあああぁ〜〜〜〜!!!!」

「なぜ自分と世界の条件を認めようとしないの? どうして自分の生きている世界を大事にしないのかしら? な〜んで人ってこうなのかな?
ムチャな妄想を地上で実現しようと、自分が主人公の、勝手な物語に、他人を巻き込もうとするかしら? どうしてこうも劇的主人公欲旺盛なのかしら?


しょうがないわね。 たまには人の――、こういう女の希望に、付合ってやるか。


そうね。都会の、アーバンライフな、シティデートの世界を与えてあげるわ!」



女神の微笑みに、空間が歪み、女は時空を超えた。
時と場所を越えて、突然現れた世界は、仮想か現実か――。




午後のアーバンシティ。
ファッショナブルな、小洒落た西洋風の街並みの中を、ヨーロピアンな気分で、どこか異邦人な情景だわと思えるほどの、高級感漂う都会の午後の一瞬を、秋風が薫る街を、男と歩いていた。
ウインドーに映る男女の姿は二人とも全裸だった。しかも男は人では無かった。淫獣だった。淫獣男は隆々勃起している。凄い。淫らな雄姿だ。肌もぬるぬるとオイリーに濡れ輝いている。ローションが歩道に滴り落ちる……


「んんんんんんんっ????
ちょっと待って!! 全裸で、しかも勃起しながらのデートだなんておかしいです!! ちっともロマンじゃない!! ぜんぜんシティガールじゃない!!

こんなの女の子の夢をぜんぜん理解してない!!
彼氏役が淫獣だなんて、最悪です!!」


「そうかしら? 顔は図抜けたハンサムだし。体も素晴らしいし。セックスもびんびんで、萎え知らずよ。理想的じゃない。ゼイタク言うわね〜。」

「だから人間じゃないじゃないですかっ!!!!
セックスの要素はもっと後です!! セックスが彼氏選びの長所、ポイントになるのは、もっと後々の段階で、初デートあたりの時点で気にする女はいないはず!! 
っていうか、どんな変態彼氏ですか!! まるでわたしもド変態みたいじゃないですか!! っていうか、街中を全裸でオ○ンチンを勃起させながらウロウロデートするのはほとんどの法治国家で犯罪ですっ!!!!」




「じゃ、別の場面、別のシチュエーションに連れていってあげる。ほら、場面転換よ。」

女神が両手で左右に空間の澱みと次元を押し拡げると、都市風景は一瞬にして掻き消え、新しい世界が姿を現した――。



(つづく)


next 02

baka-ero index

top