未来の日。遠い宇宙の彼方。
二つの太陽を持つその惑星は宇宙進出を果たした人類の植民星のひとつ。
その星域に女神が訪れた。邪(よこしま)なる破壊神である。女神のくせに母性に欠いていた。破壊が専門とはいけない。悪名を宇宙に轟かせていた。そう噂されていた。星に住む少女はそれを耳にしていた。
星の管理人たる一人の少女。宇宙巫女であった。優れた量と質の超能力をも持ち、穢(けが)れ無き斎宮(さいぐう)の乙女。召喚の能力を使って、呼び出した。男性神を。神界から。破壊の女神に対抗すべく。この星の守りに就ける。神に宿願す宇宙巫女のパワーで、いわば人が神を使役する形である。
少女は動植物たちの長であった。まさに霊長である。一人で星を管理していた。動植物園のような、美しい公園のような、宝石のような星。少女自慢の、美しき穢れなき星が、手出しなどさせない。邪神の好きにはさせぬ。
地を蹴って、惑星の外へ飛んだ。大気圏外で邪神を待った。来るのがすぐにわかった。神力を湧出させ、女神はやって来た。滅茶苦茶なパワーが神体から太陽風のように噴き出ている。
少女は毅然と神に言った。
抑えなさい。力を。この星ごと潰す気? 許されない。邪なる者よ。とっとと自分の星に帰りなさい。それとも私に、封印されたいの? 今、ここで――。
邪神に何の倫理を説いてるの? おかしいわね。
賢なる大力の男神よ。あなたからも言ってやってください。この愚神に。
構わぬ。好きにしろ。
えええぇぇぇぇ〜〜〜〜っ!!!!
宿願が足りなかったらしい。人が神をこき使おうなど、百万年早かったのだ。
どうも、いたまして。じゃ、遠慮無く。
凄まじいパワーが走った。神体より衝撃波が炸裂した。
コイツ星殺しをやる気だ!
星が溶ける。星がよがり死ぬ。私の母星が死んでしまう。星ごとイッてしまう。巨大な割れ目が縦横に走り、淫性のプロミネンスを噴き上げて、海は淫妖の大海と化し、大気は淫気に満ち満ちて、星は、空は、性宴に、淫蕩なる煮汁の洪水が、地に降り注ぎ、全有機体が、全生命が神愛を食らってよがり死んだ。そして溶けてゆく。女神の超オーラに、陸は蕩(とろ)けた。星が丸ごと、超巨大なシチューのようになってゆく。熱汁の大海と化してゆく。白昼の空に破滅のオーロラが走る。星が核から煮だった。媚性を帯びて沸きたつ。土が、岩石が、無機物までもがよがり狂い、そして、灼熱と溶融と、巨大爆発、凄まじいエネルギーの放出、幾兆幾億もの天文学的な数の光の粒子が大量に散ったかとおもうと、宇宙から完全消滅した。イッて無くなってしまった!!
星をも壊す神の巨愛は、なぜか一人少女のみを、スルーしていた。
ひどい!!!!許さない!!殺してやる!!滅ぼしてやる!!神殺しよ!!人間の怒りをみせてやるわ!!自棄になった人類が何をするか、しかとみてなさい!!
何言ってるの。こんなこともできるってことを試しにお見せしただけ。わたしは創造の神でもあるのよ。ほおれ、黙って見ててなさい。おバカさん。
何か異界の、次元を越えた力に引っ張られ、隕石が、ひとところに落ちて、集結し、吹き飛んでいたものが、塵が、ガスが、岩石が、連続大量に融合して、真っ赤な溶岩球と化し、赤熱する球状体は、急激に肥え太り、ぐんぐんと成長して巨大化し、膨張は再び惑星を構成してゆく。
星が直径を元に戻すと、大地が、大陸が、星面にまだらに浮かび、瞬冷するかのように、次々凝り固まり、不毛の荒野を、植生が一気に覆い、命が湧くように満ち、瞬間瞬間に、ミラクルが凄まじく連鎖的に起きて、星が爆発的に再生してゆく。
命が隆々と勃興してゆく。生命が炸裂し、星が命に染まってゆく。
夢魔のごとく、星は豊かに復活を遂げた。滅する前の姿、そのままに。
何ひとつ変わらず、あたかも時が戻ったかのような――。
すべての命を元に戻しといたから。少し色つけてね。うふ。
あっ!違ってしまっている! どことなくエロスの溢れる動植物たちだ。どの生物も造形がエロスだ。肉が淫らに実り、それでいて締まっている。どうにもエロいのだ。変態性に富んだその姿は、動植物問わず何もかもまるで変態だ。ようするに、私の星の命たちが、星ごとエロくされてしまった!!!!
で、次は、あなたの番よ。
破壊と創造の、凄まじき巨力の女神の、美しい瞳が、少女を熱く見つめていた。
ひ〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!!!
(つづく)