曇り空の日であった。
教師名村の受け持ちクラスの女生徒らは、日々、僅(わず)かつつではあるが、超人性を育成されつつある。その指導は生徒らから信頼さえ勝ち取りつつある。
だが、この朝の訓示は、唐突であった。
「今日は合体プレイの練習をします。連携とチームワークの良さが試されるときよ。互いを信頼して、本日の戦いに勝利しましょう。」
「え? なんの戦いですか?」
「そんなお知らせ、前にしてありましたっけ? 予定にありました? っていうか、何の試合なんですか?」
「合体プレイって、私達にレズさせる気ですかあー? 先生いやらしー!」
「だいたい誰が誰と戦うんですか?」
「戦うのはあなたたちよ。それも全員で。みんなで戦うの。戦う相手はね――。えっとそのまえに、まずは変身しちゃいなさい。あなたたち。」
にっこりと微笑(ほほえ)みながら、片手を挙げる。
光の粒子が走り、教室の出入口と窓に、光とともに、目止めがなされてゆく。何が人知を越えた物質で、シーリングされてゆく。そして、例によって教師は、凄まじいパワーを湧出しはじめた。快楽波動の大量放射である。たちまち教室は快楽の坩堝(るつぼ)と化した。快楽のレベルは無慈悲にもぐんぐん上昇してゆく。
せんせえーー!!!!もっとゆっくりぃぃぃ!!!! はっ はやすぎますっッ!!!!
死んじゃいますぅ!!!!
溶けてしまいますうぅ!!!!
このままだと溶け死にますうううう!!!!
生徒らの意見をすべて無視して、人の形を、細胞の結合を維持できないレベルにまで快楽波動の放射レベルは一気に上がった。
はひい!!!!!!!!
生徒らは、汁となって飛び散る。弾け溶け崩れる。溶けたところで、溶液が教室中を回転しはじめた。女教師の手の回転の、攪拌(かくはん)の動きに合わせて。肉汁がである。
桃色に輝く粘液の攪拌槽と化した教室は、台風のように、嵐のように、トルネードの、竜巻旋風の、祝祭空間の趣(おもむき)を呈(てい)し、ピンクの熱汁の対流は、まるで淫熱浴槽の、濡れ照る牝汁の、天国と楽園の狂宴になる。
溶けゆく時、廊下に、淫声が漏れた。おびただしい牝の喘ぎとよがり声だった。
が、少女らがバターのように溶け、汁になってゆく過程で、声も宙空に溶け消えた。代わりに教師の歌が聞こえてきた。爽やかな、朗(ほが)らかな歌声だった。演壇の上に腰掛け、教師の唇は、歌っている。口ずさんでいる。何かの唱歌のようだ。そして微笑んでいる。今日の肉料理の具合に自然とこぼれた笑みだった。
挙げた手を振り降ろすと、粘性塊はひとところに集結し、肉でありながら、揺れ動く金属融溶ような、粘土のような、流動するセラミックのような、棒状の山となり、何かひとつの形へと姿を急速に変えてゆく。
そして――、夢魔のひとときを越えて、音ひとつしない静けさが教室に戻った。
窓から差し込む、ぽうと広がる優しい光の中を、それは教室の中央に立っていた。白き裸体の少女が。
全裸は美であった。そして媚でもあった。例えようもないいやらしさがあった。その女体は、究極の淫牝であった。
40名クラス生徒たち全員を溶かして、ひとつに凝めた体――、女子生徒等の集合体は、神々しき白き姫肉。美しくも妖しげな切れ長の鋭い目をした娘は――、高貴なる性戦闘牝肉。セックスバトルの為のエロ女体強化合体である。合成によりパワーアップしている。元のひとりひとりの生徒だったときよりも何百倍も高々度に。
教師は満足そうに、造りし者と目を合わせていたが、やがて、光差す窓の外を見る。美しい目が校庭へと視線をやった。瞳が捉えたもの。
そして美しい娘へと語りかけた。
「時間ね。」
「来たわよ。」
訪問者の影が二つあった。
(つづく)